いきなりCHINA その1

僕は人生で一度も海外旅行をしたことがなかった。

これまでは特に気にしてはいなかったが、

大学生になり、多くが何かしらの理由で海外へ行き、

帰国後、海外旅行経験でマウントを取っていた。

「悔しい」 

たかが数日の旅行で何が変わるというのか。

たった数日で人をここまで傲慢にさせる

海外旅行とはいったい何者なのか。

僕は海外旅行への興味が

急激に湧いているのを感じた。

また僕は来年から中国に留学する。

留学前に一度現地を確かめておきたい。

こうして僕は初海外で中国へ行くことに決めた。

しかし普通に予約をとって旅行するのではどうも味気ない。

人生に一度の初海外なのだから

なにか記憶に残ることがしたい。

そこで僕は「イエスマン」という映画にあった、

予約を取らずに空港に行き

「何でもいいのでチケットをください」と言って

渡されたチケットで旅をするというシーンの

中国バージョンをやってみようと思った。

つまり何も予約を取らずに

「中国に行きたい」とだけ伝えて旅をするのだ。

我ながらとてもワクワクするアイディアで

決行日が近づくにつれて興奮が高まっていた。

https://ja.m.wikipedia.org/wiki/イエスマン_“YES”は人生のパスワード


そして迎えた当日。

僕はワクワクしすぎて前日バイトだったのにも関わらず、

全く眠気が起きず、家に帰ってから一睡もせずに羽田空港に向かった。

空港についた時間は4:30。

流石にこんな早くから何便も運行している訳ないだろうと

出発予定表を見ると、 台北 香港 北京 と有名どころがずらずら。

しかしここで僕は大きな見落としに気づいた。

各便を運営している会社が違うのだ。

空港職員はもちろん他社のフライト情報には詳しくない。

つまり「イエスマン」で登場した全フライト情報を管理するようなスーパー職員は

存在しないだ。

早速一番の企画が壊れてしまった僕だったが、

とりあえず一番早くに乗れる中国行きの便として香港行きの便にのろうと、

僕は職員に「予約をとっていないが、この飛行機に乗りたい」と話しかけた。

すると職員は「あちらのカウンターでお待ちください」とのこと

これはいけると意気揚々とカウンターに向かった次の瞬間、僕は耳を疑った。

「こちら正規の料金なので22万円でございます。」

は!?

確かに国際線が高いという情報は耳にしていたが、

22万円はおかしい。

22万円は臓器の闇市場で目玉二つを差し出してもまだ足りない程の金額である。

http://karapaia.com/archives/52132790.html

友人から薦められた「イエスマン」を

全く観ようとしなかったレベルのイエスマンな僕は

このレベルのイエスマンキャラを守るために、

二度と本家「イエスマン」を観れなくなってしまう恐怖に怯えあっさり「ノー」

と答えてしまった。

このまま「ノー」を言い続けていては「イエスマン」企画が「ノーマン」企画に変わってしまう。

せめて行先だけは空港の意志に従おう。

僕はとりあえず、一番早く行ける中国行きの便ということで、

香港の次にあった北京便の値段を調べた。

5万円。

安い。というより実際は高いのかもしれないが、

22万円という狂気を目の当たりにした後は全てが安く感じる。

たった5万円で北京に行けるのだ。

僕は迷わず北京行きのチケットを取り、

手荷物検査へと向かった。

僕は以前、国内線で出発前日に使用したハサミを抜き忘れ、


テロリストになりかけた経験から、

荷物に関しては万全を期したつもりだった。

しかしそれでも手荷物検査を僕の荷物はクリアすることはできなかった。

「一度中身を確認してもよろしいでしょうか」

無作為に掻き出される荷物たち。

なかなか検査に引っかかった社会不適合物は見つからない。

リュックの小ポケットに手をかけた、その時

目当てのブツが見つかった。

プロテインだ。

それも今回は旅先で水筒として活用するために、 

いつもの倍の量をいれていた。

「処分するか、こちらで飲んでください。」

せっかく長期的に強くなるためにたくさん持ってきたのに、

ここで飲み干しては強くなりすぎて僕自身が危険物として

処分されてしまうかもしれない。

ただここで処分するのは、あまりにもったいないので、

僕は泣く泣く500mlを飲み干した。

トレーニングをした後ではないので、強くなることは無かったが、

僕はプロテイン以上に危険なものを大量に持ち込んでいた気がする。

パソコンだって思いっきり殴れば人を殺せるし、 

シャーペンだってまとめて首筋に刺せば、致命傷になる。

プロテインにできることは、

せいぜいトレーニング後の人間を強くすることぐらいだ。

目先のプロテインにとらわれて、

その陰に隠れた危険物を見逃してはいけないと僕は思う。

話がそれたが、なんだかんだあって僕は北京行きの飛行機に乗り込んだ。

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機内では睡眠中に突如現れた朝食を口にしながら、

北京でやりたいことを考えていると、

あっという間に北京に到着。

さて何から手をつけようか。

次回へ続く

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