万が一ってなんなんだ

「万が一あなたたちが配ったバナナで食中毒が起きたらどうするんだ。」

さんざん僕を笑い物にしたあげく

S務課は語った。

話は先月に遡る。

僕は友人と共にバナナの格好をして

キャンパス内でバナナを配るという企画を行った。

バナナ配布企画は早稲田生のノリの良さもあって、

1時間足らずで250本を配りきるという成功を収めた。

この成功に感動した僕たちは、

さらに人数を増やし、

今度は全キャンパスで同時にバナナを配ろうと意気込んでいた。

(通称同時多発バナナテロ)

こうして集ったバナナテロリストたちは

テロリストたちだけの極秘サロンで

日程調整を進め、

本日12/10を決行日に定めた。

そして迎えた当日。

決行日情報が諜報機関に漏れてしまったせいか、

当局による 「睡眠欲」妨害を受け、

テロリストたちは集合時間から大幅に

遅刻することを余儀なくされた。

これでは武器となるバナナを購入する時間がないかもしれない。

しかし安価なバナナを大量に供給する

密輸業者100ローの協力もあり、

なんとか500本のバナナを確保することに成功した。

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そしてテロリストたちは大量のバナナを持って、

各自現場へ向かっていった。

僕は理工学部の学生と同じ最寄り駅を使っていて、

彼らの生体を知ったかぶっているという

理由で西早稲田キャンパスに派遣された。

こうしてキャンパス内にたどり着いた僕は、

バナナの手入れをしながら、

刻一刻と迫り来る決行時間を待っていた。

その時はすぐにやってきた。

僕は決行時間になったのを確認し、

すぐさま常識と書いたバナナを

学生たちに突きつけた。

すると彼らはバナナを恐れることもなく、

笑顔で受け取ってくれた。

キャンパスは違えどバナナを愛する気持ちは

変わらない。

僕は今回もテロの成功を確信した。

そう安心した次の瞬間だった。

奴らは背後から突然現れた。

青服「今 なにをされているのですか?」

僕 「バナナを配っています。」

青服 「ものを配る場合にはS務課の許可を取って下さい。」

要は許可を取ればいいんだろ。

「バナナを配って

みんなを笑顔にするテロをしています。」

と語れば、務課も人間だ。

すぐに許可を出すだろう。

僕は確信して、大人しく一度S務課へ向かった。

しかしそんな僕の淡い期待は一瞬にして打ち砕かれた。

S務課は僕を見るとすぐに、

気持ち悪い薄ら笑いを浮かべ、

一通り質問した後、本稿冒頭にもあったように

「万が一あなたが配ったバナナで

食中毒を起こした学生があなたを訴えたら

責任を取れるのか」

「これはあなたのために言っている」

などというふざけた説教を始めた。

万が一ってなんなんだ。

万が一 万が一 って言ってたらなんにも出来ないだろ。

お前は 万が一 通り魔が現れたら危険だからと言って、

外にでないのか。

万が一というのは文字通り

1万回に1回起こるか起こらないかの出来事だ。

1万回に1回起こるか起こらないことを気にして、

1万回のうち9999回以上起こることを疎かにしてどうすんだよ。

そんな事いってたら人に食べ物あげられねーよ

お土産を配ることが良くて、

何でバナナを配るのがダメなんだよ。

お土産配る時にいちいち

これ食べた人が食中毒になって、

自分を訴えられたらどうしようなんて

考えが起こる世の中なんて

僕はまっぴらゴメンだね。

こうしてあえなく許可取得に失敗しS務課から釈放された僕は

細々とキャンパス外でバナナ配りを行っていた。

もちろんキャンパス外は人も少なく、

決して配りに向いているとはいえなかった。

しかしそんな中でも、

バナナを受け取った学生は

みんないい笑顔になっていた。

僕にはみんなを喜ばせる

テロリストととしての使命がある。

S務課なんて関係ない。

奴らに学生の笑顔を奪う権利はないはずだ。

僕はもう一度キャンパス内へ足を踏み入れた。

一度キャンパスを捨てて、

逃げ帰ろうとした僕なのに

学生たちはとても優しかった。

彼らは笑顔でバナナを受け取り、

写真をとったり、

バナナに書かれたメッセージを読んだりして

各自 楽しんでいた。

S務課に大人しく従っていたら

この幸せな景色は決してなかっただろう。

僕は今回の件では間違いなく

自分が正しいと思う。

長いものに巻かれることが

常に正しいとは限らない。

自分の行動を最後に決めるのは

自分自身なのだ。



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