ハロウィン。
いまや日本の恒例行儀ともなりつつあるイベント。
今年も多くの熱狂と問題を引き起こした。
しかしハロウィン時にはあれだけ多くの仮装者が街に溢れていたにも関わらず
いまや街で仮装している者は一人も見当たらない。
仮装することがそんなに楽しいのなら毎日仮装しても良いはずである。
ハロウィンは仮装をして楽しむ風習があるだけで
仮装をしても良い日=ハロウィンだけという訳ではないはずだ。
そのことに気づいた瞬間だった。
これまで抱いたあらゆる煩悩が仮装欲に変換され、油田の如く溢れてきた。
この油田の如く現れた仮装欲を満たすは油田の管理者になるしかない。
こうして僕は1日石油王として生活することになった。
石油王になって一番最初に感じたこと
寒い
とてもアラブとは思えない。
「寒さは気から。暑い時のことを考えれば寒さなど感じない」というのはとんでもない暴論だ。
アラブの仮装をしても全く暖かく感じない。
やはり寒さには厚着が一番だ。
石油王への尊敬からか通学中に好奇の目を浴びることはほぼなかった。
しかしキャンパス内に入ると状況は一変。
前からきた石油王が知り合いかどうか知りたいのか 道行く学生の多くが僕に乱雑な視線を投げかけてきた。
石油王を金でしか判断しようとしないのは不徳の極みである。
僕の家からとれた石油に頼りっぱなしの国民がとる態度とは思えない。
石油の価格など僕の機嫌しだいでいくらでも変わるのに。
あー むかつく 禁輸しよっかな~
自分の機嫌次第で世界が変わるなんて石油王はとてもやりがいのある仕事だ。
僕はこの仕事に魅了され、一生続けていきたいと契約更新を申し出ようとした。
しかし冷静になって考えてみると油田の如く湧いたのは仮装欲だけで、石油など最初から1mlも沸いてなかったのである。
つまり僕は石油王ではなくただ石油王の仮装をしただけだったのである。
石油がなければ石油王は目指せないが、仮装道具があれば仮装王にはなれる。
この時僕は仮装王を目指すことを決意した。
仮装王になるためにはまずは仮装量だ。
これからは毎日仮装して大学に向かおう。 /p>