前回に続いてオランダ・アムステルダムで起きた出来事について語っていきたいと思う。
2021/9/6
開放・快楽主義のオランダの雰囲気を堪能し尽くした僕は次なる目的地であるドイツ・デュッセルドルフへの準備を進めていた。
アムステルダムからデュッセルドルフまではバスで約4時間。出発は14:50であり、チェックアウトから3時間ほどの余裕があった。
そこで僕は暇つぶしと安宿での粗末なシャワー体験を払拭するために〆のサウナをキメることにした。
早速調査を開始すると、サウナの聖地フィンランドからほど近いこともありオランダにはいくつかの良質そうなサウナがあることがわかった。
僕はその中でもアムステルダム中央駅に近く、評価も高いSauna Decoに訪れることに決めた。

オランダのサウナとはどのようなものなのだろうか関心を抱いた僕はSauna Decoの口コミを眺めていた。
するといくつかの興味深い口コミを発見した。

男女混浴? サウナに男女混浴なんてありえるのか?
ああ水着が必要なやつか? そういえば以前テレビでヨーロッパの人々は水着を着て風呂に入ると放送していたような気がする。
興味をそそられてしまった僕はSauna Decoに関してさらに情報を集めた。
そこでわかったのは以下の3つだった
- 1 男女混浴
- 2 全裸(着衣なし)
- 3 性的なサウナではない。普通のサウナ
意味がわからなかった。
いくら開放の国オランダといえど、見知らぬ男女が全裸で活動する空間があるのか?
全身から汗を吹き出したむさ苦しい老爺と金髪サウナ美女が💰もなしで共存?
恥らいと貞操の国日本で育った僕にはそうしたオランダのサウナ文化はにわかに信じがたいものであった。
百聞は一見にしかず。
なにはともあれ実際に行ってみないことには真実を確かめることはできない。
僕は疑問と期待に胸をふくらませSauna Decoへ向かった。
アムステルダム中央駅から歩いて12分。Sauna Decoは川沿いの小さなビルの一角にひっそりと佇んていた。

中に入るとやたらとゴージャスなインテリアが並べられたサロンのような空間が奥に見え、受付を挟んで手前側にサウナルームとロッカーが設置されていた。

次に簡単な受付を済ませ、案内されるがままにロッカーに向かった。
ここである違和感に気づいた。
「ロッカーが一つしかない」
Sauna Decoは混浴サウナである。
にも関わらずロッカーは一つだけだ。
幸か不幸かオープン直後ということもありサウナ内は数人の老爺がいるだけで、特に変わった光景は無かった。
「ちょっと来るのが早すぎたかな」
自らの失態を反省しつつ、手早く着換え、シャワールームへ向かった。
シャワーを浴び終えた僕は人が増えるのを待つがてら、施設を探検した。
サウナは2つ ドライサウナとスチームサウナ

水風呂は水深1.5mのプールになっており水温は17度程度か。

水風呂の奥には外気浴が楽しめるベンチもあった。
サウナ施設としては基本の設備が整っており、Sauna Decoが純粋にサウナを楽しむ場所であることが伺えた。
いつまでも裸でふらふらとしていも仕方がないのでとりあえず僕はサウナに入ることにした。
いつものようにサウナ→水風呂(プール)→外気浴というセットをこなし束の間の快楽を堪能した。
2セット目に入ろうとした頃、にわかに周囲が賑やかさを帯び始めた。
様子を確認すると若い白人のカップルが何組か入場したようだった。
何が始まるのか?
僕の好奇心は大いに湧き上がっていたが、ロッカールームまで戻るのは不粋なので、何事も無かったかのように2セット目のサウナに入った。
サウナ中も僕の好奇心は水風呂の水の如くひたすらに湧き続けた。
Sauna Decoには内湯などの温泉施設はない。つまりここに訪れることはすなわちサウナに入ることを意味する。
先ほどの彼女らもいづれはこのサウナにやってくるのだろうか。
いつも以上にしみ込むサウナの熱によって、僕の額には大粒の汗が浮かんでいた。
煩悩にまみれ、ソワソワしながら熱に耐えること数分。その瞬間は突然やってきた。
ふいにサウナ室の扉が大きく開き、鮮やかなブロンドヘアーの女性が一糸まとわぬ姿で入場した。
彼女は僕の驚きの視線など全く意を介さず、僕の正面の座席にタオルを引き、仰向けに横たわった。
僕はいったいどこに来てしまったのだろうか。
何の変哲もないサウナが急に異世界へと変わった。
何をも気にすることなく生まれたままの姿で純粋にサウナを楽しむ姿は肉体面もそうだが、自らの快楽のために性のしがらみをも捨て、全てを開放するという精神面の美しさがあった。
僕は思わず見惚れてしまいそうになった。
だが、ここはあくまで一般のサウナ。過度な視線は大きな誤解の始まりだ。
僕は視線をグッと下げ、思考の世界に没頭することにした。
思考に集中していく中でやはりたどり着いたのは「自分の視界の狭さ」だ。
僕はこれまでサウナや浴場が全裸男女混浴でないことを常識だと考えていた。
しかし世界にはサウナを楽しむために当たり前のように全裸になり、浴場スペースの効率化のために混浴にする国も存在するのだ。
カルチャーショックだなんて言えば陳腐なフレーズかもしれないが、やはり文化の違いを体感することは僕に新たな考えを与えてくれる強烈なきっかけだと思う。
ありがとう。快楽・開放主義オランダ。
そんなことを考えていると彼女は立ち上がり、タオルを片付け、瀟洒にサウナを後にした。
あの光景は2度と忘れることはできないだろうな。
彼女のいなくなったサウナ台を見て、僕はそう強く感じた。