戸山公園
大学に近いということもあり、早稲田生であれば一度は必ず訪れたことがあるであろう超有名スポットだ。
昼は無邪気に玉遊びに興じる子供たち、夜はサークルの活動に勤しむ学生たち と市民の憩いの場として大いに親しまれている。
そんな戸山公園にある奇怪な噂が流れていることをみなさんはご存知だろうか。
そう「ハッテン場」だ。
僕は最初にこの噂を聞いたとき、すぐに信じることはできなかった。
昼には授業を休んでお酒を飲み、夜には友達と鍋を囲んだ僕たちの思い出の場所にそんな裏の顔があっただなんて。
でも僕は調べなければならない。戸山公園を愛する者の1人として彼の表の顔だけでなく裏の顔もちゃんと知っておく必要がある。
僕は神妙な面持ちで「戸山公園 ハッテン場」と検索した。
僕は全てを察した。
「どうせ嘘だろ」と虚勢を張って必死に動揺を押さえていた僕の心境などお構い無く、グーグルは無慈悲にも戸山公園がハッテン場であるという事実を示す情報を表示した。
「いったい戸山公園で何が起きているのか」
愛する戸山公園の裏の顔を知った僕は、彼のもとでどんなドラマが生まれているのか詮索したい衝動に駆られた。
僕は戸山公園ハッテン場という名のついた掲示板を片っ端から閲覧した。
「箱根山には露出狂が多い」「トイレ付近は女装子がうろついている。」「水場の奥にある藪林が青姦スポット」
僕は2年以上に渡って戸山公園に通いつめていたが掲示板で語られていた光景を見たことはない。
「本当にこれらの情報は正しいのか?」
僕は調べれば調べるほど疑心暗鬼になっていった。しかし掲示板を見ているだけでは真相にたどり着くことはできない。となれば方法は1つだ。
「自分で確かめる。」
僕は勇気を振り絞り掲示板にこんな書き込みをした。
するとすぐにこんな返信があった。
心のどこかで「どうせ何の反応も無いだろう」と思っていた僕にとってこの素早い反応は驚くべきものだった。
その後はこの男に言われるがままに僕は自分のメールアドレスを掲示板に投稿し連絡先を交換した。
そして3日に渡って繰り広げられた熾烈な日程調整の後、僕らは7月11日の22:00に戸山公園にある箱根山のふもとに集合することになった。
ゲイマッサージ店での初出勤、2作目のホモビデオ出演の打診。
その間 僕にも様々な出来事が起こった。時が経つのはあっという間。すぐに運命の7月11日がやってきた。
当日を迎えた僕は愛する戸山公園の裏の顔を見ることになるかもしれないという興奮から猛烈なソワソワ感に襲われ、集合時間の30分前に到着してしまった。
箱根山のふもとに向かうためには、昼間は子供連れで賑わうグラウンド、やけに大きな公衆トイレ、青姦スポットとして噂されていた藪林と様々な場所を通る。
通学路として見慣れた場所もこれまで「ハッテン場」として男たちの間で熱い物語が紡がれきた場所だと考えると、
そこには同性を愛する者だけが入ることのできる世界が繰り広げられていて、軽い気持ちでその世界に入り込もうとしている僕を拒もうとしているような独特な空気感を感じた。
こうしてソワソワしながら待つこと30分、寸分の遅れもなく時間通りに1人の男が現れた。
彼はとても若かった。
明らかに僕よりも年下で儚げな雰囲気があった。
顔を合わせた僕たちは雨が降っていたということもあり、すぐに男子トイレの中に入った。
個室に入り鍵をかけバッグを置いた僕たちはどちらからということもなくすぐに互いの唇を合わせていた。
そのまま僕たちは時が止まったかのように静止していた。
そこには確かに僕たちだけの世界があった。
僕が「彼らの世界」に受け入れられた瞬間だった。
それから何分たったころだろうか。
ふいに外から足跡が聞こえた。
僕は一瞬「僕たちの世界」から離れてしまった。
彼に全く動じる様子は無かった。
その後もたびたび外からの足跡が僕の鼓膜にねじ込まれた。
その度に僕は彼との「世界」から離れて、勃起をやめてしまった。
彼はそんな僕を見てうつむき気味にこう声をかけた。
「どうしたら気持ちいいですか?」
情けなかった。
彼は決して「僕たちの世界」から離れることはないのに、僕はたった数秒の足跡で離れてしまう。
外にいる人たちが「僕たちの世界」に入ってくることは決してないのに。
もう外を気にしている場合ではない。
僕はあえて外で誰かが用を足している時に彼にこんな要求をした。
「ちくびなめて」
彼は嫌な顔1つせず僕の乳首に飛び付いた。
僕はひたすら快楽にのみ意識を向けた。
「僕たちの世界」はお互いが100%快楽に集中した時にだけできる世界だ。
もう他の奴は関係ない。
僕の局部は膨張を続けた。
そして快楽が100%を越えた瞬間、
「僕たちの世界」に純白の虹がかかった。
そして束の間の「僕たちの世界」は幕を閉じ、僕たちは無言のまま和式便所の周りに飛び散った精子を拭き取りトイレに流した。
その後互いに「世界」を共有した僕たちは最初に会った時よりも友好的な雰囲気で西早稲田駅まで歩きながら話した。
彼は18歳の大学生。実家暮らしでお金もなく「世界」を作る場所が無いため、戸山公園を利用してるとのこと。
僕はこの背景を聞いてはっとした。
戸山公園が受け入れてくれるのは楽しそうに遊ぶ家族連れや、ばか騒ぎをして青春ぶる大学生たちのような「日なたにいる存在」だけではない。
彼のような複雑な境遇や欲望を抱えた「日陰にいる存在」も受け入れてくれるのだ。
戸山公園の寛大さを改めて感じた。ハッテン場潜入だった
※僕はノンケ(女性好き)です。