本当に意味不明な奴でありたいか?

僕は中学生の時にある決意をしていた。

「20歳になる前に童貞を卒業できなかったら、

10代最後の日に風俗に行こう」と 

当時 僕は「5年もあるんだから、いつかそういう時は必ずそういうときが来るだろう」

と童貞特有の楽観視をしていた。

しかし現実は甘くなかった。

僕は童貞卒業はおろか

彼女すらできないまま、

10代最後の日を迎えた。

僕は迷うことなく中学時代の決意に従って、

日本一の風俗街で童貞とプライドを捨てた。

僕の初めての風俗体験だった。

それ以来僕は様々な風俗へ行った。

ピンサロ デリヘル

ソープ サウナ

どこも非日常的で刺激に満ちた体験をすることができたが、

行った後はいつも 「何かを大切なものを失ってしまったのではないか」

という疑念からくる猛烈な虚無感に襲われていた。

そして僕は徐々に風俗へ行く意味を見出だせなくなってしまい、

台湾研修が始まってからは風俗に行くのをやめ、

健全な夜を過ごしていた。

そんなエピソードに乏しい研修生活も

中盤を迎えたある日、

同じ研修に参加している後輩たちが

「先輩! クラブ行きませんか?」と

若さと活力に満ちた雰囲気で誘ってきた。

彼らとはホモビデオに出た話と

サウナに行った話ですぐに意気投合していた。

彼らは普段からクラブに通い、

自分でイベントを開いているというなかなかの強者だ。

前述の通り僕は台北での人生最悪の

風俗体験以降すっかり意気消沈して、

あらゆる欲を失い「無」への道を突き進んでいたため、

当初は全く乗り気ではなかった。

しかし 彼らの「かわいい子と関わりたい」という

暴力的なまでに純粋で無垢な姿勢が

僕の消沈した気分を奮い立たせた。

僕は彼らと共にクラブに行くことに決めた。

そして迎えた当日。

僕らは門限の23:00に宿舎を出て、

これまで一度使ったことのなかったタクシーに乗り、

風俗恒例の妙な緊張感に包まれながら

目的地に向かった。

目的地の周辺には風俗街特有の

欲望と金にまみれた異様な雰囲気が漂っていた。

僕はこれから待ち構える未知の世界に

強い恐怖を感じながらも

この恐怖心を隠すために

必死になって後輩たちに話しかけていた。

そしてパスポートの提示と

所持金の1/2にあたる1000元(4000円)の支払いという

重々しい儀式を通過した後、

僕はついに異空間に足を踏み入れた。

そこには異空間という名にふさわしい

カオスが広がっていた。

何の曲なのかもわからないほどの大音量の音楽、

その音楽に合わせて手を振り、腰を振り

意味不明なダンスに興じる国籍不詳の男女。

意味不明な奴らが意味不明な音楽に

意味不明な振り付けで踊っていた。

この空間には意味不明を極めし者達が

己の意味不明度を競いあう「意味不明王決定戦」を行っていると

僕は感じた。

僕のブログのタイトルは「意味不明な奴でありたい」だ。

意味不明を極めようとしている者の一人として、

僕は決してこの意味不明者達に負けてはいけない。

僕は意を決して一番盛り上がっていた

DJ前のブースに乗り込んだ。

するとすぐに意味不明で国籍不明な外人が

意味不明なノリで絡んで来た。

この意味不明者達のノリについていけなければ、

意味不明を極めし者になることはできない。

僕はその場の勢いを利用して、

すぐにこの意味不明界隈に加入することにした。

そしてしばらく意味不明な外人達と共に肩を組んで踊っていた。

すると一人の意味不明なほど肥大化した

肉体を持った白人女性が、

僕をダンスに誘ってきた。

「チャンスだ」

この場にいる意味不明者達はみんな

美男美女を求めて踊っている。

ここで僕がこの醜い白人と踊ることで、

この「意味不明王決定戦」の中で一歩リードできるのではないか。

僕は迷わずこの醜い白人の誘いに乗った。

そして互いのお尻をつきあわせるという

意味不明なダンスをした後、

密着系のダンスをして、

そのまま無駄にアチスなキスをした。

出会ってわずか数十秒の出来事だった。

「勝った」

いくら世界中の意味不明者が集まるクラブでさえ、

こんな醜い白人とキスをする

意味不明な男は僕ぐらいしかいないだろう。

僕はキスをした瞬間

この「意味不明王決定戦」の勝利を確信し、

心のなかで高らかとガッツポーズをした。

しかしその高揚感は長くは続かなかった。

キスを終え、白人と離れてすぐ

僕に襲ってきたのは

自らの道徳心に背いたことから来るのであろう

猛烈な虚無感だった。

「なぜくだらないプライドのためにあんな醜い白人とキスしてしまったのだろう。」

僕は大切な何かを失ってしまったように感じた。

僕はこれまで「意味不明な奴でありたい」

というポリシーのもと活動してきた。

しかし意味不明な行動をとった後に

このような虚無感を感じるということは

本当の僕は意味不明な奴ではなく、

ただ普通な意味有明な奴なのかもしれない。

自分の人間性を深く考察させられる。

そんな台湾クラブ体験だった。

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