僕が大学で所属する禁酒会にはある真偽不明な理論がある。
「酒は人を弱くする。牛乳は人を強くする。」
僕は飲酒が病気の原因の一つとなる場合が多いことを考慮すると
前半に関しては特に異論はないが、
最近 後半部分に疑問を抱くようになった。
確かに牛乳は強くなるための栄養が豊富だ。
しかし僕らは牛乳を飲むとすぐにお腹を壊してしまう。
これでは牛乳の栄養をしっかり摂取できず、
結果的に強くなれてはいないのではないか。
そもそも牛乳とは牛の子どもが成長するために存在している。
僕らが牛乳を吸収しきれないのは
もしかすると人間だからなのかもしれない。
つまり牛になれば牛乳の栄養を吸収し強くなれるのだ。
当初牛乳の天下だった禁酒会も
現在は牛乳派 コーヒー派 茶派の3つの派閥に分裂している。
もう一度牛乳を中心とした禁酒会を
復活させるには日常的に牛乳を飲んでいる
牛乳派が強さを見せつけなければならない。
そして本日1月16日は禁酒の日であり、
禁酒会にとっては3派の頂点を決める禁酒祭の日だ。
ここで3派に違いを見せつけ、
もう一度牛乳政権の再興を果たそう。
こうして僕は真の強さを求め牛になった。
牛となり牛乳の栄養を100%吸収できるようになった
僕の勢いは凄まじかった。
徒競走では圧倒的なスピードで他派を蹴散らし、
目利き対決では
茶派が茶と尿を間違えるなか、
完璧な目利きを披露し、
大相撲では前評判で無敵艦隊と称された
コーヒー派相手に番狂わせを起こした。
牛乳派は各種目で圧倒的な力を見せた。
しかしここで本日目利き以外では
特に見せ場のなかった茶派が
「牛乳派が強すぎる。何かドーピングしてるに違いない。」
とドーピング検査を行うよう求めてきた。
僕はただ牛乳を飲んで強くなっただけだ。
ドーピングなどしていない。
むしろいっちゃもんをつけた茶派の小物さが露になるであろう。
僕は茶派によるドーピング検査の申し出を受け入れた。
結果は恐るべきものとなった。
なんと僕のバッグから禁止薬物アルコールが
発見されたのだ。
僕は今日アルコールを入れた覚えはない。
これは間違いなく牛乳派の強さを妬んだ茶派の犯行に違いない。
茶派は陰謀で牛乳派を追放し、
禁酒祭の王座をつかんだのだ。
僕ら牛乳派は決して今日の悔しさを忘れてはならない。
いつか必ず真の勝利をつかむまでは。