僕は治験に落ちた。
結果発表は入院予定日の前日だった。
入院者には予定日の1週間前から、いくつかの行動制限があった。
合格ありきの発表だと思っていた。
僕はこの1週間、治験候補者として恥じないような生活を送ってきた。
大好きなビタミン剤もカップ麺ぶっこみ飯もやめた。
酒の誘惑も自慰の誘惑も絶った。
全ては被験者として新薬の発展に寄与し、社会に貢献するためだった。
しかし僕は落ちた。
同じ事前検査を受けたS塚とT岡は合格した。
入院直前にも関わらず、大阪で飲み散らかしていたS塚。
普段から他人を殴り散らかしているT岡。
日本の創薬界を支える重要な治験に参加するべき人材とは到底思えない。
だが 合格したのは彼らだった。
詳しい理由は分からない。
ただ1つ分かることは僕の体には決して創薬界には関わってはならないと評価されるほどの重大な欠陥があるということだけだ。
その欠陥が何であるかを教えてくれる者は誰もいない。
受付おばさんもただ「他の方が合格しました」と伝えるばかりだ。
僕が治験に落ちたのはこれで3回目だ。
僕はこれまで治験に合格できるのは「日本社会に貢献したい」という信念のもと、常に自らの体と向き合い、理想の健康状態を維持する一流健康家だけだと思っていた。
今回の結果はそんな僕の慰めを完膚なきまでに打ち砕いた。
僕の健康状態は「中」ではなく「下」だったのだ。
僕が今回の治験で手にしたものはこの事実だけだ。
事前検査でもらった3500円はその日のうちに交通費と交際費に消えた。
僕にとっての今回の治験はただ東大宮まで行って「お前は不健康だ」と罵倒されるだけのイベントだったのだ。
それも不健康の詳細は伝えられることはなく。
こんなに不毛な出来事に出くわすことはそうそうない。
そんな僕が本ブログで伝えたいことがただ1つある。
「健康を大切にしよう」