伝えたいことも伝えられない世の中を売り飛ばしたい

僕はときおりこんな質問を受けることがある。

「買ったコスプレはどうしてるの?」

僕がこれまで買ってきたコスプレの衣装は全部で20着を越えている。

その全てを僕の4.5畳の部屋に詰め込んでしまえば、僕の部屋は近隣住民からの村八分の対象となってしまうだろう。

じゃあどうしているのか?

答えは簡単。「メルカリへの出品」だ。

「一度着たコスプレなんて売れるの?」といった意見もあるかもしれないが、

何を隠そう世は空前のコスプレブーム。

僕が出品したコスプレのほとんどは一週間もたたない内にばんばん売れていく。

中には買った額よりも高く売れるものもあるほどだ。

とりあえず就職したくないという理由で企業に手を出そうとする大学生はいますぐコスプレ転売を始めるべきである。

しかしこのコスプレブームにすら乗り損ねてしまった憐れなコスプレたちも当然のごとく存在する。

僕は基本的に1度着たコスプレは2度と着ないというポリシーを持っている。

そのためあえなく売れ残ったコスプレたちは二度と日の目を見ることなく朽ちていく。

いかにしてこのコスプレたちにもう一度晴れ舞台を与えるか。

メルカリではコスプレを着た写真を商品説明に加えることができる。

しかし本当のコスプレの素晴らしさというのは実際に見てみなければ分からない。

となると答えは1つ。

「実際に着る」だ。

僕にとって今まで着てきたコスプレたちは

大学生活という人生の夏休みを共に戦った戦友だ。

この戦友たちが押し入れの奥で腐っていく姿を黙って見ている訳にはいかない。

僕はこれまでのポリシーを破り、

実際に多くの学生が参加する講義に売れ残ったコスプレで参戦し戦友の素晴らしさを宣伝することにした。

1着目のコスプレはその名も

「うんちの男体盛り~泣き顔を添えて~」だ

このコスプレは悪名高き禁酒会時代に着たことで無名なコスプレだ。

当時は「酒をこの世から無くす」という危険思想をヒントに「うんこが汚いわけないだろ」という狂気の理論を打ち出していた。

僕はこの理論はうんちのコスプレをしたからこそできたのであると信じている。

普段から真面目な生活を送る大学生もみんなどこか狂気性を必ず持っているはずだ。

その狂気性を手軽に引き出すことのできるうんちコスプレは売れ残っているのが不思議なほどの良品である。

僕はこのうんちコスプレの素晴らしさを広めるために大事な入場服にこいつを選んだ。

そしていつものように20分ほど遅刻して、講義に参加すると、僕の狙い通り、50人ほどの受講者の視線が一気に集まった。

普段ならここで何事もなかったかのようにうんちコスプレのまま講義を受けるのだが、今日は他のコスプレの宣伝もある。

この視線が集まるという一瞬のチャンスを逃してはいけない。

僕は迷わず、うんちコスプレを脱いで2着目の

「意味不明な奴はインナーにスイカを着ている」に着替えた。

このコスプレは僕が本ブログの方向性について1つの手がかりを見つけた時に着ていた大変思い出深いコスプレだ。

もしあの時スイカを着ていなければ、

僕は未だにこのブログの方向性を定めることができていなかったと思う。

スイカコスプレが僕の進路を決めてくれたといっても過言ではない。

これだけ素晴らしさスイカコスプレを僕の手元だけに置いておくのは勿体ない。

僕が今回参加した講義では、就活を控えた3年生がとても多い。

彼らもまた僕のようにスイカコスプレをして自分の進路を明確にして欲しい。

そんな思いを込めて僕は2着目にスイカを選び、講義の大半をスイカコスプレで過ごした。

そして講義も終盤に差し掛かり、いつものようにコメントペーパーを書く時間を迎えた。

僕は遅刻したため、コメントペーパーをもらえなかったことを口実に前へ出て最後のコスプレ宣伝をしようと考えた。

最後の3着目は

「オオカミはあなたにかけがえのない経験を届けます。」だ。

このコスプレは僕が人生で初めて職務質問というかけがえのない貴重な体験を手に入れた時に着ていたとても思い出深いコスプレだ。

オオカミコスプレをしていなければ、そのような経験は間違いなく手に入れることが出来なかっただろう。

このオオカミコスプレはそうした貴重な体験を手繰り寄せる不思議な力を持っている。

いま売れ残っているのは間違いないなく奇跡と言えるだろう。

就活でアピールできるような貴重な体験を求めている大学生たちにピッタリの代物だ。

僕はこのオオカミコスプレの貴重性を伝えるために、オオカミマスクを被って前へ出た。

さっきまでうんちコスプレをしていたやつが急にオオカミに変わっていたら、「こいつ何着持ってるんだ?」といって

いくら他人に興味の無い大学生たちでも気になってメルカリのアカウントを聞いて来るだろう。

しかし現実は残酷だった。

周囲からはクスクスといった冷笑がこだまし、

先生からは

「何やってるんですか?」「(頭)大丈夫ですか?」と聞かれる始末。

僕のコスプレにかけた思いは全く伝わることはなく、ただただ50人の前でコスプレでスベるという醜態を晒しただけであった。

伝えることというのは本当に難しい。

時間制限のないブログと違って、

現実世界で僕に与えられる時間はとても短い。

僕はこれまでこの短い時間で、自分を伝えるのにはコスプレという視覚データを用いるのが一番だと考えていたが、

今回の経験からコスプレだけで何かを伝えるというのはとても難しいと感じた。

コスプレを超越した何かを生み出す。

今後の課題はこれになるのだろう。

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