コスプレ頼みからの脱却

僕はここ最近ある悩みを抱えていた。

「毎日コスプレ登校をすることが

意味不明な奴であることにつながるのか?」

確かに大学でコスプレで来る奴はなかなかいないし、

僕がなぜコスプレをしているのかを知らない人からすれば、

十分意味不明であると言えるかもしれない。

しかしコスプレも毎日続けていると、

「どうせまたあいつはコスプレして来るのだろう」

と周囲から予測され、マンネリ化してしまうようになる。

元々 僕は「圧倒的な意味不明さ」を求め、

周囲の度肝を抜くためにコスプレを始めたのに、

周囲から自分の行動を予測されては

意味有明になってしまい、本末転倒だ。

「意味不明とはいったい何なのか?」

前学期 僕はコスプレを続けきった。

それゆえに「僕=コスプレ」という

イメージを定着させることを成功させていれば、

僕が普通の格好をしているだけで、

ある種の衝撃を与えることができたかもしれない。

しかし僕が最後にコスプレをしてから

3ヶ月がたとうとしている。

その間にも、僕は何度か友人達と普通の服装で会っているため、

彼らは僕の普通の服装に見慣れてしまっていて、

普通の服装で登校したところで

僕は彼らにとって意味有明になってしまい、

彼らの度肝を抜くことはできない。

コスプレもダメ。普通の服装もダメ。

どうすれば彼らの度肝を抜くことができるのか?

僕は悩みに悩み、

何度も熟睡した夜を過ごした。 

もはや登校そのものすら諦めようとしたその時、

その答えはとても身近なところにあることに気づいた。

答えは「髪」だ。

僕はこれまで人生で一度も髪を染めたことがない。

それに僕の顔の第一印象を聞かれた際に、

多くの人が真っ暗の髪と汚いゲジゲジ眉毛を答えるし、

小学生時代のアダ名の一つもゲジマユだった。

一般的にこうした顔の特徴を無くすことは

主に罰ゲームや、他人主導の企画で、

無理矢理やらされることが多い。

これらの特徴を自発的にいきなり無くしてしまえば、

周囲の度肝を抜けるに違いない。

僕は迷わず髪と眉を染めることに決めた。

「どの色に染めるか?」

茶髪では変化が目立たず、中途半端な結果になってしまう。

かといって、赤髪や青髪などの奇抜な髪型に

するとあからさまにネタに走り過ぎていて、

痛々しい。

プロスポーツの珍プレー集がなぜ面白いのかというと、

彼らがみんな真剣にやっているからだ。

ただネタに走っていると思われるだけでは、

限界があるので、

「こいつは真剣に似合ってると思ってやってるんじゃないか」

という疑問を抱かせることも必要だと

僕は思った。

となると、結論は一つ

金髪だ。

金髪なら変化は一目瞭然だし、

全く街では見ないという髪色でもないので、

ある程度のガチ感も与えることができる。

しかし一口に金髪にするといっても、

どうやってするのか?

カラー剤を適当に髪につければ、

金髪になるのか?

僕は染髪についてとことん無知であったため、

グーグルで「金髪 染める方法」と何度も調べた。

度重なる調査の結果、

きれいな金髪にするなら、

金はかかるが美容院にお願いして、

自分のしたい髪色のイメージ画像を

用意すると良いという情報を入手した。

僕は早速ホットペッパービューティーに登録し、

「横浜 メンズ カラー」で検索して

一番最初に出てきた美容院を予約し、

金髪の有名人として唯一思いついた

本田圭佑の画像を用意した。

こうして万全の準備を終えた僕は

意気揚々と美容院に乗り込んだ。

しかし僕とは真逆の世界であるファッション業界の頂点「美容院」は

アウェーの洗練と言わんばかりに

僕に強烈な事実を突きつけた。

「お客様の髪だと、ここまでの金髪にするにはブリーチ2回必要なので

全部で16000円になりますね。」

16000円!? ヤバい。明らかにヤバい。

今まで一番高いコスプレですら、5000円を越えたことはないのに、

この価格は圧倒的だ。

だが僕はもう覚悟を決めている。

周囲の度肝を抜くためには金は惜しまない。

僕は美容師さんの忠告を二つ返事で了解し、

施術が始まった。

結果は驚くべきものだった。

まずブリーチ1回目でかなり色が抜け、

激痛に絶え忍んだ2回目とカラー剤をつけた後には

想像以上にまともな金髪になり、

家に帰って眉毛もブリーチすると、

もはや以前の面影がない完全体になった。

ここまで髪がまともになってしまうと、

もはやいつもの格好ではもったいない。

僕はパンツから革ジャン、

ネックレスに至るまであらゆるファッションを新調した。

これだけやれば、間違いなく奴らの度肝を抜ける。

僕はそう確信して、

この半年前からは考えられないような

服装で授業に乗り込んだ。

反応は期待通りだった。

みんな僕がコスプレをしてくるだろうと

予測していたのか

教室に入った僕を見た瞬間、

みんな すっとんきょうな笑い声をあげた。

一部から「きっつ」といった心ない批判を

受けることもあったが、

僕が身と口座を削ることでこうした反応を

得られたというのは、

今回の企画が

意味不明化に成功していたということになるのだろう。

ただ僕はここで勘違いしてはいけない。

コスプレを完全に捨てることが

意味不明化を果たす方法ではないのだ。

今回は意味不明化を成功させるために、

泣く泣くコスプレを捨てただけだ。

コスプレが意味不明化に必要となれば、

すぐに僕はコスプレを復活させるだろう。

僕は意味不明というのは予測不能という

言葉に置き換えられるのではないかと思っている。

僕はコスプレを続けるがあまり、

予測可能な人間となってしまった。

今後はコスプレだけでなく、

別の何かを常に取り入れながら、

動いていったりすることも必要なのではないかと、

僕は思っている。

コスプレ頼みへの脱却。

今期のテーマはこれで行きたい。

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