世の中には 漢としての血が滾る言葉がある。
スーパーパンプマックス
話は3月上旬に遡る。
僕は友人のこんりんと共にサウナの聖地「しきじ」を訪れた。
食事→サウナ→電車内うたた寝という至って平和な旅の終わり、彼は衝撃の告白をした。
「俺 薬物中毒なんだよね」
聞くところによると彼は筋肉増強を目指すがあまり、多くのサプリメント摂取に依存した生活を送るようになったという。
そんな彼が必死に購入欲望を抑えているサプリメントがあった。
スーパーパンプマックス

「スーパー」「パンプ」「マックス」強そうな言葉をこれでもかと並べた「ぼくのかんがえたさいきょうサプリメント」的ネーミング。
「パンプ感」という日常生活ではまず目にしないであろう宣伝文句。
どれも僕をスーパーパンプマックスの虜にするに十分な要素であった。
いったいこいつは僕の体にどんな革命を起こしてくれるのか?
効果を知りたきゃ買え。
僕はスーパーパンプマックスを購入した。
購入から1週間ほどたったある日、スーパーパンプマックスは唐突にやってきた。

レッド&ブルーという食品とは思えない毒々しいコントラスト、中央に堂々と鎮座する「スーパーパンプマックス」の文字。
宣伝写真をも上回る圧倒的な存在感だ。
流石「スーパーパンプマックス」期待を裏切らない。
僕はスーパーパンプマックスの素晴らしい容貌に感動し、撮影を繰り返した。
「さてこいつをどう使おうか」
「スーパーパンプマックス」を使用したトレーニーによると、スーパーパンプマックスには以下のような効果があるようだった。
スーパーパンプマックスの効能は?
・超パンプするぜ!
・集中力があっぷして筋トレしまくれるぜ!
・筋肉痛と疲労もなくなるぜ!
・いやっほぉぉぉ!
彼はトレーニング前に飲むことを推奨していたが、僕はあいにく トレーニーでもなんでもないただのはいぐ~だ。
トレーニング前に使うという概念は存在しない。
それよりもこれだけ素晴らしい効能がある「スーパーパンプマックス」をトレーニングだけにしか使わないというのは脳筋にもほどがある。
トレーニング以外にも何か「スーパーパンプマックス」が役立つ瞬間があるはずだ。
世界中の人々が「スーパーパンプマックス」を愛飲する世の中を作るために、「スーパーパンプマックス」の素晴らしい使い方を考案しよう。
まず僕はスーパーパンプマックスの「集中力向上」という効果に注目した。
「集中力向上」はパワーだけではなくインテリジェンスにも応用できるのではないか。
短い時間で次々と問題が現れる性質ゆえに、多くの集中力を必要とするWEBテスト。
その難しさゆえに悩める就活生も多いはずだ。
「スーパーパンプマックス」によって集中力が高まり、WEBテストで力を発揮できるなら、就活生にとって「スーパーパンプマックス」は欠かせないものになるはずだ。
僕はまずWEBテスト前に「スーパーパンプマックス」を飲むことにした。


聞くところによると「スーパーパンプマックス」はトレーニング30分前に最も力を発揮するらしい。
僕は推奨通りWEBテスト30分前に「スーパーパンプマックス」を飲んだ。
味はグレープフルーツの苦みだけを濃縮したような味で口が裂けても、美味しいとは言えない。
しかし効果さえあれば美味しさなど関係ないことは既にプロテインが証明している。
大事なのは効果だ。
飲んでから10分ほどで僕の体に変化が現れ始めた。
「心臓のパンプが速い」
凄まじい心臓の鼓動。ここまでパンプしているのは「人妻パラダイス」前にマムシドリンクを飲んで以来だ。
心臓のパンプが上がるにつれて、やる気のパンプも上がってきた。
WEBテストやりたい WEBテストやりたい
人生でこれほどWEBテストを受けたくなったのは初めてだろう。
なんだか今なら凄い点数がとれる気がする。
僕は30分をも待たずに、自室の机に飛び乗り、WEBテストを開始した。
しかしテスト開始直後、重大な欠陥に気づいた。
「思考がまとまらない」
「スーパーパンプマックス」の効果により、心臓とやる気のパンプは大いに高まったが、その代償に思考力のパンプが大いに下がってしまった。
文章の内容が全く頭に入ってこないし、メモをとる量は増えたが、内容は支離滅裂だった。
唯一効果があるとすれば、クリック力が上がり、確実に選択肢をクリックできるようになったぐらいだろう。
「スーパーパンプマックス」が高めた集中力は思考力を犠牲にして成り立っていたのだ。
思考力を問う課題に「スーパーパンプマックス」は向かない。
では「スーパーパンプマックス」に向いている課題とは何か?
続く